JUGEMテーマ:仏教

 

日本の夏は死の影を孕んでいる。

 

強い陽射しに世界は照らし出され、植物は生命力に充ち満ちているから、生の季節ではないだろうかと思われるかもしれません。

 

けれど光が強く射すからこそ、影もより色濃くなるように感じます。

 

蝉は地上での短い時間を過ごして骸をさらし、蚯蚓もアスファルトの上で干からび転がっています。


また歴史をさかのぼれば、広島と長崎に原爆が投下され終戦を迎えたのも真夏で、今でも毎年8月に原爆忌が営まれます。

 

そして夏はお盆の季節です。

 

7月盆の地域、8月盆の地域、他にも8月上旬や7月8月下旬に地蔵盆を行う地域もあります。

 

全国各地で様々な風習・習慣がありますが、総じて共通しているのは「数日の間、亡き方やご先祖さまが帰ってくる」という部分でしょう。

 

日本人にとって夏は、生と死が色濃く映し出され、戦禍で亡くなった方々を想い、亡き方々と交流する季節なのです。

 

 

お盆という言葉の起源は諸説あります。

 

仏教には『仏説盂蘭盆経』というお経がありますが、かといってお盆が仏教のみをルーツとした行事かというと、そうとも言えないようです。

 

むしろ日本人が古来より抱いていた宗教観・死生観・死後観が、仏教と絡み合っていった日本特有の習慣になっています。

 

普段「無宗教です」と言っている現代人が、お盆には墓参りに行って手を合わせるのは矛盾しているように見えます。

 

でも人は理性だけで生きているわけではなく、感情のある生きものですので、その矛盾は好ましいものであり、解消しなくてよいものだと私は思います。

 

 

日本特有の習慣と書きましたが、亡き方や先祖を想うことは、実は人種や宗教を越えて行われています。

 

たとえばここ数年で急に盛り上がりを見せているハロウィン。

 

若者が仮装をして街に繰り出し、変装したことで高揚して大騒ぎをしている報道を見て、最初は眉をひそめていました。

 

しかしルーツを調べるとケルト人の慣習で、死者の霊が家族を尋ねてくるという考えに基づいているそうです。

 

亡き方が生者を訪れる、まさにお盆と同じ構造です。

 

ちなみにその時、悪魔や魔女も一緒にこの世に出てきてしまうので、それを避けるために魔物や魔女に変装をするのだそうです。

 

また今年のディズニー映画『リメンバー・ミー』は、メキシコなど中米地域の慣習である「死者の日」をモチーフにしているそうです。

 

「死者の日」もまたお盆のように、亡き方が数日の間この世に帰ってくるものと考えられていて、生者はドクロをモチーフにした仮装をするのだそうです。

 

おそらく世界中に、これに類似する習慣があると考えられます。

 

 

「死んだら終わり、なにも無い」というのもひとつの死生観です。


けれど時おり死者と交流しながら生き、自分が死んだ後の世界に想いを馳せる。

 

目に見える世界だけが全てではないのだと思いながら生きる。

 

そうした生きかたは、私たちの人生を豊かに彩ってくれるのではないでしょうか。

関連する記事
トラックバック
この記事のトラックバックURL